ベテルギウスはすでに超新星爆発しているのか?

ベテルギウスは、オリオン座にある明るい一等星です。
冬の大三角のひとつとしても有名です。
このベテルギウスは、星の末期状態にあり星の最後である超新星爆発を起こすのではないかと言われています。
このベテルギウスは、既に超新星爆発しているのではないか? という話があったのでそのことについて説明したいと思います。
ベテルギウスは既に超新星爆発をしているのではないか
Quaraに次のような質問があったのを見かけました。
「ベテルギウスが既に超新星爆発しているかもしれないと言うと、相対論をわかってないと言われました。時間を補正するのが間違いでお互い過去の姿にみえるままが矛盾のない真実で相対論だそうです。本当ですか?」
Quara
答えとしては、ベテルギウスは、地球から642.5光年離れているので、超新星爆発してもその光が届くのに642.5年かかるのだから、すでに爆発していても地球では観測できないのですでに超新星爆発している可能性がある、というものでした。
逆に、相対論をわかっていないと言った人の方が相対論をわかっていないとのこと。
これを見て、ちょっと考えるところがありました。
相対論の同時の相対性
相対性理論では、同時の相対性というものがあり「同時」というときには気を付けないといけません。
同時の相対性は「離れた場所で起こったことが同時かどうかは座標系によって違う」というものです。
地球とベテルギウスは遠く離れているので、地球の今とベテルギウスのいつが同時なのかは座標系によって違うということです。
この質問に相対論的に答えるには座標系を規定しないといけないのです。
座標系を規定せずに質問していることから、人によっては「相対論をわかっていない」と言われることもあるでしょう。
一般的な話
特に座標系を決めずに一般的な話で進めます。
この質問は「地球の今とベテルギウスの超新星爆発はどちらが時間的に先なのか?」ということになります。
まず、同時が相対的なら座標系によっては、地球の今とベテルギウスの超新星爆発が同時だということがあるかもしれません。
地球の今とベテルギウスの超新星爆発前が同時という座標も、地球の今とベテルギウスの超新星爆発後が同時だという座標もあります。
どちらが先だとは言えないのです。
でも、時間的に差が大きいと、どんな座標系をとっても時間的な前後が決まることがあります(どのくらい前かは座標系によって違う)。
ですから、特に座標系を決めない場合、次の3つの可能性があります。
- どの座標系でも地球の今の時点でベテルギウスが爆発している
- どの座標系でも地球の今の時点でべテルギウスは爆発していない
- 地球の今の時点でベテルギウスが爆発しているかどうかは座標系によって違う
ここで、3の場合は座標系をはっきり決めないとベテルギウスがすでに超新星爆発しているかどうかを問うことができません。
座標系を決めずに一般的な話に留まる限り、ベテルギウスがすでに超新星爆発しているかどうかは決められないのが3の場合なのです。
ということは、座標系を決めずに「すでにベテルギウスが爆発しているかどうか」という問いに答えられるのは1か2の場合だけです。
そして、ベテルギウスが超新星爆発した光が今の地球に届いていないことから、1の「どの座標系でも地球の今の時点でベテルギウスが爆発している」の可能性はありません。
ですから、答えとしては、2の「どの座標系でも地球の今の時点でべテルギウスは爆発していない」か、3の「ベテルギウスがすでに爆発しているかどうか決めることはできない」のどちらかしかありません。
もしかしたら、質問者に「相対論をわかってない」と言った人はこのような意味で答えたのかもしれません。
こればかりは、会話自体を聞いていないと何とも言えないのです。
地球に固定した座標系
このような話をすると、座標系を決めていないと言っても「地球に固定した座標系」であることが暗黙の了解のはずだと言う人がいるでしょう。
それならば、3の「地球の今の時点でベテルギウスが爆発しているかどうかは座標系によって違う」で、地球に固定した座標系ですでにベテルギウスが爆発している可能性はあります。
ただ、ベテルギウスが爆発しているかどうかではなく「相対論をわかっている」「わかっていない」という話をするのであれば、座標系まで考える必要があると思うのですが、いかがでしょう?